毎日新聞社の政策情報誌「毎日フォーラム」の2019年1月号「創る 地域活性リポート」に理事長 鹿嶋が取材されました。
以下、文章
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放置竹林を資源によみがえらせる
全国的に竹が利用されなくなり里山の竹林が荒廃し大変な状況となっている。
60歳でサラリーマン生活に終止符を打ち、千葉県長生郡で竹林が放置されている現状を知り、問題解決を目指すことを決意した。活動拠点の竹林面積は統計上は298ヘクタールだが、最新のGIS(地理情報システム)による画像解析の結果によると507ヘクタールと報告され、竹林面積が拡大している実態が分かった。
この地域は里山として民有地が多くある。生活様式の変化で竹が資源として活用されなくなり、少子高齢化も影響して放置される竹林が増えた。住居の裏山には倒木と朽ちた竹が折り重なり人を寄せ付けない状況となっているところが多い。竹の厄介なところは、繁殖力が極めて強く、毎年整備を続けていかなければすぐに元に戻ってしまうことだ。特に河川に生えている竹は流れを妨げ洪水の一因になるとも言われ、海の影響も大きいと感じている。
そこで、里山資源の利用を考え、里山をよみがえらせることを目的に2010年9月にNPO法人竹もりの里を立ち上げた。まずは里山で厄介者として扱われている竹の有効活用を目指すために地権者と覚書を交わして放置竹林を確保し、地元住民と都市住民による竹林整備をスタートさせた。
毎月決まった曜日に竹林整備デーを開催した。13年1月から始めたボランティアによる活動は18年末までに72回を数えた。整備した竹林面積は12ヘクタールを超え、タケノコが出荷できるようになり、直売所での販売、タケノコ狩りイベントに利用している。
しかし、収穫時期は短く地域に貢献できるほどの事業とはなりにくい。その問題を解決するために、竹を土壌改良材として農業利用することを考えた。竹材を樹木粉砕機でパウダー状に粉砕し有機農業用資材として、家庭菜園、イチゴ農家、レンコン農家に採用してもらえるようになった。
枯れ竹や倒竹は放置しておくと腐敗によりメタンガス等を発生するため、竹炭化することで温暖化ガス削減につなげられると考えている。他の団体と共同で開放型炭化炉を3年前に開発し、大量に低コストの竹炭を効率的に製造、安定的に供給することができるようになった。開放型炭化炉で作る竹炭は柔らかく、窯焼きの竹炭と比較しても比重が軽いため水分の吸水率は高く、成分のほとんどが炭素として残っている。
竹林整備を求められる地域は、小規模で急峻な傾斜地が多く大型機械の導入は難しく、簡易な機械を使用して人力に頼るところが大きい。整備に多くの人員が求められる中、竹をビジネスとして成功させることは多くの若者を定着させることにつながり、地域の活性化に貢献できる。
今、地域の仲間と連携して幼竹をメンマに加工するプロジエクトに参加して、竹の消費を増やすことに取り組んでいる。試食の反応は上々で今シーズンの幼竹はその多くを加工用に収穫していきたい。幼竹を収穫するには竹林整備が欠かせない。地域資源が循環することで活性化し、この地域の竹林がよみがえることを期待している。
かしま・よいち 1949年宮崎県生まれ。09年大手化学メーカーを定年退職。10年仲間とNPO法人竹もりの里を設立、理事長。13年千葉県長南町坂本の放置竹林の整備に着手、竹林内で竹炭を製造。全国で竹炭の普及活動を展開中。
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